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 奄美大島から那覇へは飛行機で渡った。奄美大島はそれなりに大きな島なので、那覇行きの飛行機もそれなりに大きいだろうと思っていたら大間違いだった。双発のプロペラ機で定員50人ほどの小さな飛行機だ。私のような飛行機嫌いにはかなり辛い状況だが、眼下に見える海の綺麗さに怖さを忘れていた。

 那覇に着き、まずは以前から気になっていた「あやふに」へ向かった。前に那覇へ来たとき前を通ったのだが、開店時間前だったのだ。“豆腐と古酒(クースー)”と暖簾にあるように、豆腐料理が有名なようだ。
 マンションの一階に店はあるのだが、店内は分厚いカウンターと掘りこたつ式のテーブルがいくつかで、とても落ち着いた空間だ。まだお客のいないカウンターの端に座り、着物のママさん(女将さんと言うよりはママさんという言葉がぴったり)にオリオンビールの生をお願いした。オリオンビールの生は、東京でも飲めるようになったが、やはり地元で飲むものは違う、と思う。豆腐料理のメニューの中からあつあつ豆腐をお願いし、しばし待つ間にママさんとお話させていただいた。平日は毎日和服に割烹着らしいのだが、土曜日は洋服だそうだ。とても優しい声で、癒される。ちょっとボーっとしてしまった。気が付くとあつあつ豆腐が目の前に届いていた。あつあつ豆腐とはいわゆる煮奴で、ビールの冷たさにちょうど合う。特に硬い島豆腐なので、味がしっかりしているのだ。本州の豆腐は何であんなに軟弱なのだろう。島の豆腐は壱岐でも固く沖縄の豆腐と同じようだったのを思い出した。
 ここで、酒を古酒に変えてみた。忠孝の15年は甕に入れられ、保存されている。これは美味しそうだ。ロックでいただくと、まろやかな甘い香りとアルコール独特のきつい臭みが鼻をくすぐる。これは、豆腐ようを頼まないわけにはいかない。そういかないのだ。そのマリアージュ(お互いを引き立たせる組み合わせ)といったら、言葉に尽くせないほど。こんなに相性の良い組み合わせも珍しいほどだ。満足して、取材のお願いをしたら、快く引き受けていただいた。(後は番組をご覧ください。取材当日、ママさんは洋服だったのがちょっと残念。)


 その足で、嘉手川学さんが待つ栄町へ向かった。別の番組の打合せのため「おでん東大」待ち合わせていたのだ。しかし、到着すると学さんは外にいる。「おでん東大」はまだ開店時間前だったのだ。仕方なく、学さんが行きつけという焼き鳥「ちん」に入った。打合せもそこそこに、早速オリオンビールと焼き鳥を注文。手羽先、かわ、ハツ、ばら肉、トマトのベーコン巻き、と矢継ぎ早に頼んだがどれも美味しい。5人ぐらいしか入れない小さな店だが、なかなかのものだ。
 私は、居酒屋紀行のロケハンも兼ねているので、そろそろ次の店に移動したい。すると、学さんもそれを感じたのか、ご主人に「最近どんな店に行ってる?」と聞いてくれた。すると、「ヤギの旨い店ならすぐそこの『まるまん』ですね」と、予想もしない答えだ。私も、学さんも仕事?で飲み歩いているので、かなりの店は知っているはずなのだが、初耳の店だ。これは行くしかない。すぐ店を出て、向かった。

 「まるまん」はすぐに見つかった。古い店で、お世辞にも綺麗とは言えない。店内も短いカウンターと小上がりが一つ。ねーねーが一人でやっているようだ。そして驚くのは、メニューがやぎ刺しとやぎ汁(ひーじゃー汁)だけなのだ。泡盛の田とやぎ刺しを二人前頼んだ。この店は相当古く、40年ぐらいは経つそうだ。
 そんなことをねーねーと話しながら待つことしばし。ピンクの綺麗な刺身が現れた。臭みは一切無いすばらしい刺身だ。学さんもこんなに美味しい刺身は初めてかもしれないと驚いている。私なぞ美味しくて声も出ない。二人でしゃぶりついていると、「美味しいでしょ? 有名人もよく来るのよ」と自慢そうだ。ここは一つ、取材の打診をしてみようかと思ったら、先に学さんが、「何か雑誌に出たことある?」と、先に声を掛けた。仕事柄と言おうか、体に染み付いた癖だ。こちらの期待をよそに、「取材は一切お断り。こんな狭い店だから、常連のお客さんに迷惑になるでしょう」と一言で、切り捨てられた。残念。まあ、仕方が無い。知られざる名店は、紹介しないで残しておいたほうが良いのかも知れない。(ここで、書いてしまっては、申し訳ないのだが、あまりにも美味しいやぎだったので、書かせていただきました。もしこれを読んで行かれる方がいらっしゃいましたら、くれぐれもお一人かお二人で、静かに楽しんでいらしてください)

 学さんと別れ、以前取材した「小桜」へ向かった。まだやぎの旨さが、舌に残っている。「小桜」の前に立ってやっと気が付いたのだが、やぎと言えば「さかえ」があるじゃないか。そう、「小桜」の隣にやぎの有名店「さかえ」があるのだ。なんで、今まで気が付かなかったのだろう。今回は「さかえ」にお願いしようと、入る前から決めていた。
 スイングドアのような戸を開けると、店内は満員。さすが人気店だ。どうにか、カウンターの一つに座らせていただき、菊の露とやぎ刺しをお願いした。この店は40年以上も続く老舗で、いまはお母さんと娘で切り盛りしている。私も以前一度来たことがある。お母さんと娘、お客さんと娘のやり取りが面白く、ついつい話に入ってしまう。そんな沖縄の人懐っこさが凝縮したような店だ。
 カウンターの上には誰でもつまめるように、おひたしや油味噌が並んでいる。これもまた魅力の一つだ。そして、「まるまん」にも勝るとも劣らないやぎ刺し。超満員で、ゆっくりはできなかったが、最後に取材のお願いをして、店を出た。(後は、番組でご覧ください。)


 豆腐とやぎ。今回は食にこだわった回になりそうだ。しかし、もう一軒バーも紹介したい。私の行きつけのバー「サミーズバー」「ステア」だ。二店ともちょい悪オヤジ風のマスターがシェイカーを振っている。そして、お二人は親友で、お互いの店を行き来しているらしい。まず、松山の「ステア」に向かった。
 蔦(?)のからまるドアを開けると、ドーム状の天井が印象的だ。カウンターの一番手前、ここがマスターの定位置だ。その前に座りジントニックをお願いした。カクテルの作り方はちょっと荒っぽいが、手馴れた作りだ。美味しい。ここのマスターは人望が厚く、この店から巣立ったバーテンダーは多い。コザでも二店ほどめぐり合った。そして、前回お邪魔したときカウンターの中にいた女性も、つい最近巣立ったようだ。もう一杯、ギムレットをいただき、ゆっくりとその切れ味を楽しんだ。
 さて、ここと「サミーズバー」どちらにお願いしたものか。悩む。何年も前、この「ステア」を紹介いただいたのはサミーさんだし。と、何気なくサミーさんの話をマスターに聞くと、「サミーの息子イッセイが今、那覇でバーテンダーやっているよ」と予想だにしない答え。なんでも、北谷の店は週末だけの営業にして、平日は那覇の「サミーズバー」にいるらしい。それは驚いた。早速行かなくては。

 取材交渉もせずに、「サミーズバー」へ向かった。泊りのはずれで、とてもにぎやかとはいえないところに「サミーズバー」はある。以前、那覇でやっていて、北谷に移り、そこも息子に任せて、再び那覇に戻ったサミーさんは、アロハでカウンターに立つ。いかにも南国のバーといったインテリアで、沖縄らしい。店内は、かなりの数のお客さんで埋め尽くされ、気持ちの良い騒々しさで充満している。カウンターにはサミーさんと息子のイッセイが二人で入っていた。二人が並んでいるのを見たのは何年ぶりだろう。イッセイは、サミーさんのアロハスタイルとは対照的にボウタイをきちんと締めている。そして、ちょい悪オヤジのサミーさんとは反対に丁寧な仕事でカクテルを作る。イッセイのギムレットは美味しかった。(サミーさんのカクテルが美味しくないと言うことではありませんので、誤解のなきよう(笑))
 混雑した店内で、あまり話は出来なかったが、どうも、イッセイはもう一度カクテルを勉強したいと、那覇のある店に入ったのだが、すぐに辞めて、サミーズバーを手伝っているらしい。いつまで手伝うのかは分からないが、ほほえましいではないか。親子でカウンターに立つなんて。うらやましい限りだ。もう少し話をしたかったが、もう遅い。取材のお願いは電話ですることとし、店を後にした。

 帰り道、バーはどちらにしようか迷ったが、結局「ステア」にお願いした。サミーさんは取材を快諾してくれなさそうだし、イッセイがいつまで店にいるか分からない。落ち着いたらまた、北谷の店にでも遊びに行けばよいのだし。(後は番組でご覧ください)

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