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4月30日(土) リマ(ペルー)
「リマの赤い海」
およそ32時間にも及ぶフライトの果て、機内アナウンスがあと15分でリマのホルヘ・チャベス国際空港に着陸することを告げた。 アンデス山脈を越えた搭乗機は徐々に高度を下げ始め、私は機内での長い、ホントに長い時間が終わることに心から安堵し、窓の景色をぼんやりと眺めていた。
ペルーの太平洋岸は、長さ約3000km、幅30〜50kmのコスタと呼ばれる海岸砂漠地帯。海沿いにある首都のリマも例外ではなく、薄茶色の大地に広がる人口800万人の大都市である。そのリマの市街地を通過した搭乗機は、いったん海上に出てUターンしながら着陸態勢に入る。機窓に白い波が打ち寄せる海岸が見え始めたとき、私は海の色が赤黒く変化しているのに気がついた。最初は赤潮が発生しているのだと思ったが、窓から見える沿岸の海ははるか彼方まで赤褐色の長い帯が続いている。これは単なる自然現象ではない。
私は、初めて訪れるペルーの異常な風景にただならぬ不穏な雰囲気を感じたが、その一方で猛烈な好奇心が沸き上がる気持ちを押さえきれないでいた。
「リマの赤い海」、逢坂剛の小説タイトルのようだが、その秘密を探ることがこの旅の最初のテーマになった。
■リマ郊外の沿岸部

 空港で撮影機材の通関手続きを終え、南アメリカ大陸最初の国ペルーの土を踏む。 4ヶ月に渡る旅に必要な大量の荷物を迎えのワゴン車に積み込んで、リマ新市街にあるホテルへと向かう。 その車上で、しかも空港を出て20分もしないうちに大仰なタイトル「リマの赤い海」の秘密は実にあっけなく解けてしまったのである。
私たちが滞在するホテルのある新市街地は海沿いにあるため、車はすぐに海岸道路へと向かった。その道路には、乗用車やバスに混じって夥しい数のダンプトラックが行き交っていた。どのトラックも荷台に土や大小の石、煉瓦、破砕されたコンクリートなどを山積みし、黒い排気ガスをまき散らしている。 しばらく走るとその場所があった。 トラックたちが目指していたのはまさに海岸そのもので、彼らは水際に近づけるだけ近づくと、そこで積んでいたものを捨てていたのである。

■海岸の埋め立て地に向かうトラック
■土、煉瓦、コンクリート廃材・・・
 我々の車を運転するドライバーのルーチョに聞くと、リマの海岸地帯は大部分が建設廃棄物の捨て場兼埋め立て地になっているのだと教えてくれた。誰もが市に5ソル(日本円で200円程度)払えば捨てていいらしい。翌日ルーチョにお願いしてその場所へ行ってみると、海面から高さ20〜30mぐらいまで土、煉瓦、コンクリート、石材、木材など、ありとあらゆる建設廃材で埋め尽くされていた。元々の海岸は、波打ち際のほんの数メートルだけが残されており、そこだけ玉砂利の美しい浜の面影をかろうじて残されていた。私はその汚らしい風景に身勝手な嫌悪感を感じるのと同時に、なぜ海岸に捨てるのだろうかと不思議にも思っていた。しかも市が認めているのだ。 本でしか知らない知識だが、リマの郊外には人も動物も、植物すらない砂漠が無限に広がっているはず。わざわざ海岸に捨てることはないだろうと思ったのである。
ここからは想像である。
思い当たったのは、捨て場からホテルに引き返す途中のまだ少ししか埋め立てられていない場所に立ち寄ったときだった。海岸から沖に向かって20mほど突き出した石積みの防波堤があった。その先に2,3人の釣り人を見かけ、釣り好きの虫が起きてしまった私と宮ちゃん(今回の旅のメカニック兼ドライバー兼スチルカメラ担当)は、ペルー海釣り情報を入手すべくその防波堤に向かった。
そこで見つけた、海に捨てる理由を。
その海岸では、捨てられた土やコンクリートの破片を波が持ち去っていたのである。
トラックで運び、ただ捨てるだけでいいのだ。
もし、内陸部に捨て場を作れば、運ばれた建設廃材をブルドーザーなどで慣らし、量が増えれば捨て場所を移動するための道路も必要になる。当然費用がかかるのだ。リマ市はその予算をケチっている、あるいは予算がないため、海の波にその仕事を押しつけているのだ(想像だが)。
ルーチョやペルー在住の通訳兼ガイド役の具志堅君にも聞いてみたが、本当の理由は今日まで判っていない。
しかし、私は自分の想像が当たっている気がする。 リマの赤い海の原因は、捨てられた建設廃材だった。 (私は慎み深いので、「赤い色はリマの海が流す血の色だったのだ」などという自己陶酔型文章は書かない、書いたけど。)
■遙か遠くまで続く建設廃材の山
■波が廃土を絶え間なく運び去る
追記。
さて、暗い話題で初回を締めるのもどうかと思うので防波堤のその後を。
私と宮ちゃんが見に行くと、人の良さそうな地元の人が獲物を見せてくれた。
餌は「ムイムイ」と呼ばれる甲殻類の仲間、釣れていたのは、彼らの発音がうまく聞き取れなかったので名前が分からない顔はハゼ、体はギンポに似た根魚の仲間。スープにするととてもおいしいそうだ。
その後、宮ちゃんが日本から持参したロッドで南米大陸の第一投。
■赤い海に釣り糸を投げる
■無為無為じゃなくてムイムイ
■釣れた魚のとぼけた顔
■宮崎雄司、南米フィッシング第一投
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