| 午後9時。東の空がまっ赤に燃えて1日が始まる。 マイナス4℃。空気は切れるように冷たく、東のウィンドウはまっ白に凍って路面も凍結している。 朝食後、太陽がもう少し昇るのを待って出発。
メサ(卓状台地)を縫って上り下りする土の道が延々と続く。手足の先が冷たくなり、次第に感覚がなくなってくる。時々、どうして俺はこんな所にいるのだ、こんな所で何をしているんだと思う。もちろん、自業自得なのだが・・・。
午後6時。目的地まで60kmを残して日没。真っ暗闇の中を、ただ黙々と走る。気がつけば、あたり一面雪だ。知らぬ間に標高が上がってきたらしい。そして遂に、道の上にも雪と氷が現れ始めた。車の後ろに回り、その轍の上をなぞりながらソロソロ、バリバリと、タイヤが氷を割る音が聞こえる。雪の上ではタイヤが滑る。緊張で体が硬くなる。宮崎も力が入っているはずだ。これ以上続いたら駄目だなと思い始めた時、道が緩やかに下り始めた。 闇の中に、淋しそうだが暖かい集落の灯が見えた。人気のない集落の隅で、子供たちがテニスをしている。 今までの緊張が糸が切れたようになる。
1軒だけの宿を見つけるが、予約が入っているとか何とか言って断られる。こんな所で予約なんてあるわけがない。明らかに私たちを警戒しているのだ。とりあえず夕食はつくってあげると言って私たちを中に入れてくれた。食堂で暖炉が燃えている。そのまわりで体を温めている内に、米のスープや牛肉のミラネサが出てきた。その、おいしいこと。部屋が一杯なら食堂の床でもいいから寝かせてくれと言うと、多分予約はキャンセルになるから泊まれるかもしれないとオバさん。よく見れば、オバさん少し酔っているらしい。 で、結局、1泊8$で部屋を確保。
寒い部屋で毛布を体に巻き、これから先の旅程について考える。大陸南端までは、まだ500km近くある。そのうえ、もう一度アンデスを越えてチリに入らねばならない。どうしよう・・・。 長い、そして忘れられない1日になった。原野の厳しさと、そこに生きる人々の、武骨な優しさ。
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