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午前8時半になって、やっと仄明るくなる。 どこまでも一直線の道。地平線の遥か彼方の空だけが青く抜けている。そこまで行けば晴れているのだが、走れど走れど辿り着かない。結局、一時間近く走ってやっと太陽が顔を出す。平均時速100kmほどで走っているから、100km先の空模様まで見えていることになる。つまり、ただひたすら何もない原野が延々と続く。
綿を千切ったような幾万の雲。高い所にある雲は偏西風(ジェットストリーム)のせいで糸を引いたように流れている。
リオ・マジョという名の集落から舗装が終わり、小石混じりの土の道に変わった。ぬかるみと水溜まりをやりすごし、滑るタイヤを押さえ込みながら黙々と走る。もう歌う歌も底をついた。
午後6時、パタゴニアの日没。西の地平線に太陽が沈むと同時に東から銀色の月が昇ってくる。地平線のあたりを染めるピンク色が見る間に広がり、やがて空全体がピンク色に燃えて雲が金色に輝き始める。何度体験してもパタゴニアの夕焼けは凄絶だ。見わたす限り無人の、音も匂いもない世界の只中で呆けるように空を見続ける。冬のパタゴニアは死の世界だ。生命の温もりの欠片もない。そして、凍るように美しい。
闇の中をさらに100km走ってペリト・モレノの集落へ。
1泊15$の宿。食堂では年寄りたちがバクチに興じ、先住民の血の混じった男たちが無言で食べている。
厳しい土地の人々はあまり喋らない。これからやって来る長い冬に備え、各々自分の中へ閉じ籠もろうとしているかのように見える。これも南米。ラテンアメリカは明るくて社交的な世界だけではない。
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