小森威典からのメッセージ

温泉にはいろんな顔がある。どれひとつ取っても、一見みなチャーミングな顔をしている。しかし・・・。それらは実に装った顔・・・。本当の顔にお目にかかることなど滅多にできないのである。
今から14年前の94年。フランスのメディア学者のレジス・ドブレ氏は、情報のヒステリー化、短絡化を挙げ、「大衆迎合的人道主義」が横行し、「浅薄で凡庸なイメージ」が少数意見を圧殺する。と説いた。こうした傾向をドブレは、「ファシズムよりましというだけで民主主義ではない」と云い切ったのである。まさにこの言葉は日本の文化である“温泉”についてもあてはまる。特に注目したいのは、「少数意見...」のところだ。いや、もしかしたら現代の短絡化したテレビは“温泉の本当の顔(=少数意見)”を“圧殺する”という意識すらなかったのかもしれない・・・。“装った顔”までも本当の顔だと思っていたわけだ・・・。
しかし、テレビはその事実を知った。あの数年前の“白骨温泉二セ温泉騒動”である。ところが・・・。テレビはその後も何の反省もしなかった。相も変わらず、源泉の扱い方にも目をむけようとせず、今までと何も変わらない温泉番組を作り続けた。そして「源泉」と「温泉」の区別すらつかない厚顔なプロデューサーは、そのような番組作りに辟易している視聴者が大勢いることにさえ気付いていない。
残念ながら現在のテレビ情報番組は、活字メディアにも遅れをとっている。私はこのような状況を知るにつけ、怒りすら覚えてきた。それでは、その状況を逆手に取って「源泉」にとことんこだわった撮り方をしてみようと思い立った。本物探しの旅が始まったのは、それからのことである。しかし、取材を進めていくうちに、これはテレビだけの責任だけではなく、温泉旅館側にも大きな責任があることに気付かされた。なにせ本当の温泉旅館が、源泉の扱いにあまりに無関心だったのだ・・・。これには驚きを通りこして怒りすら感じてしまった。
さらに、取材を進めると、驚くべき実態が明らかになった。源泉に水を足したりせず、沸しもしない“本物の温泉”は、なんと1%にも満たなかったのである。今までの温泉番組作りはなんだったのかと、今までの自分の仕事にも疑問が芽生え、と同時に急に萎えてしまいそうになった。今まで、日本の文化だと思っていた温泉なのに...本物はたった1%だったなんて・・・。しかし、それならばと思い立った。たった1%しかないならば、その情報そのものに希少性があるのではないかと。そこから、私の番組作りが始まった。
もぎたての完熟トマトの美味しさのような“完熟温泉”の本当の美味しさを味わってもらえるような、そんな番組を作ろう!
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小森 威典
1936年神戸市生まれ。新劇の役者として30年以上活動。 1985年にテレビ制作会社を設立。NTV、NHKなどで多数制作。ギャラクシー奨励賞、通産大臣賞受賞。源泉探検隊結成。旅チャンネルでは「野口悦男のからだにいい源泉の旅」「からだにいい五つ星源泉の宿」「あった!これが本物の源泉宿」などの番組制作に携わる。 |
















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