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前回の岡山に続いて、山陽地方の広島県にお邪魔してみた。広島県では、県庁所在地である広島市に一度伺っているが、その後ご無沙汰していた。広島には、呉や尾道など、個性あふれる街が多いので、ぜひもう一度行きたいと思っていたが、ようやく希望が叶った。
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| 尾道駅に降り立つと、目の前がすぐ港だ。川と間違えるような狭い尾道水道の向うには、向島が見える。駄洒落ではないだろうが、誰が命名したのだろう。とても分かりやすい名前だ。ホテルまで、海岸沿いを歩くと、向島との間に幾つかの渡し舟が運航していた。車や自転車や人が運ばれていくのだが、ほんの数分で行ったり来たりしている。なんとものどかな風景だ。大金を使って巨大な橋を架けるより、尾道の風景には合っているような気がする。 |
| ホテルに荷物を預け、すぐ隣のラーメン屋で尾道ラーメンを食べた。尾道ラーメンは、東京では食べたことがあったが、地元で食べるのは初めてだ。なにしろ、尾道は始めてなのだから。とんこつがベースで魚介類の出汁を混ぜていると聞いていたのだが、かなりとんこつが強い。背油も沢山浮いているが、こってりとしていてなかなか美味しい。個人的な印象では、旭川ラーメンほど魚の香りが強くなく、また、醤油の強さが抑えてあるので食べやすいかもしれない。まずは美味しいものが食べられて、幸先が良い。 |
| 尾道市役所は海のすぐ脇にあった。市庁舎から糸をたらせば、釣りができそうなくらいだ。道を挟んで反対側には、蔵を改装したような尾道映画資料館がある。映画の街として有名な尾道に来たら、やはり素通りはできないだろう。時間の余裕は余り無かったので、ちょっとのつもりで覗いてみた。館内には小津安二郎監督作品から始まって、往年の名画の資料やポスターが所狭しと並んでいる。尾道出身の監督、大林信彦の映画についても多くの資料が残されていた。ちょっとのつもりが約一時間も滞在し、楽しませてもらった。 |
| 日が暮れる前に千光寺山に登らなければならない。急いで、ロープーウェイに飛び乗り、頂上に向かった。やはり展望台からの眺めはすばらしく、オープニングはここしか考えられないだろう。ちょっと芸は無いが。尾道の町並みへ向かう小道が「文学の小道」だ。尾道に関係の深い文学者の碑が、25個も建っているらしい。この小道、下るのはそう大して苦労は無いが、登るのはそうとう苦労しそうだ。一つ一つの碑をじっくり眺めながら下れば、ゆうに一時間以上かかる。街に着いたのはもうすでに夕方であった。 |
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| 初めて来た町なので、居酒屋の場所を確かめようと、路地を歩いてみて驚いた。路地はみんなとても狭く、迷路のようだ。特に、居酒屋やスナックが集まる久保辺りはまっすぐ通った道はほとんど無く、すぐに曲がり角に突き当たる。今はまだ灯りは点いていないが、夜はさぞかし良い雰囲気だろう。いかにも地方の飲み屋街という感じだ。 |
| 日もとっぷりと暮れ、まず一軒目は、飲み屋街からはちょっと外れた、郵便局の目の前にある「きっ粋」に入ってみた。まだ新しい店らしいが、広島県の居酒屋情報に詳しいシャオヘイさんのホームページから情報をいただいた。店はブティックの横を通って、奥に入り口があった。まだ客のいない店内はちょっと薄暗く、東南アジアのようなインテリアだ。日本の居酒屋だと分かるのは、壁に張られたメニューに、地物の刺身や天ぷらの文字が見えるからだ。まずはビールと刺身のミニ盛をお願いした。ミニ盛とは言うものの、ヒラメ、サワラ、タコ、ヒラマサと四種類も盛り付けてある。お徳用だ。カウンターの隅に置かれた花には、祝三周年とある。若いご主人に「三周年なんだ」と話しかけると、照れくさそうに、「そうなんです。もう三年経ちました。地元生まれなので、地物の魚にこだわってやってきたら、あっという間でした。」となんとも清々しい。ビールから日本酒に変えようと思い、カウンターの上に並んだ酒瓶を見回すと、日本酒と焼酎の瓶の横にホッピーがあるではないか。聞くと、大衆居酒屋としてやって行きたいので、関西以西では珍しいホッピーをどうしても揃えたかったと言う。しかし、ホッピーを知らない人々は、純然たるノンアルコール飲料だと思っていて、そのまま焼酎を入れずに飲んでしまうことがあるらしい。東京の人間からすると笑い話のような話だが、知らないのだから仕方の無いことだろう。まあ、東京でいつもホッピーを飲んでいる私が、尾道に来てまでホッピーを飲む理由も無いので、広島の日本酒「加茂鶴」を燗でいただいた。広島や岡山の酒は比較的甘いのが特徴で、東京の居酒屋でも、甘口の酒としてこの酒を置いているところがあるくらいだ。お勧めの肴は?と聞くと、自家製さつま揚げと言う答え。素直に従い、ついでにネブトの南蛮漬けもお願いした。ネブトとは大変小さい魚で、この辺でしか食べないらしい。頭を取り除き、揚げて南蛮漬けにしてあるのだが、これが大変美味しい。酒のあてにちょうどだ。地元の魚を美味しく食べられる居酒屋を目指して、がんばっているのが伝わってくる。なかなか元気のある店なので、ここに取材をお願いしようと思い、次の店を目指した。(後は番組をご覧ください。) |
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| 全国の居酒屋、酒屋を紹介しているホームページで見つけたのが「小鉢」だ。通りに面した鮮魚店が、路地の奥で営業している店と聞いていたのだが、その鮮魚店はまだ夕方だと言うのに閉まっている。心配になったが、路地の奥を覗いてみると、居酒屋の方はやっているようだ。幅80センチメートルほどの狭い路地を入ると、「瀬戸の味 小鉢」と染め抜かれた暖簾が架かっている。店内はカウンターと右の奥に幾つか座敷があるようだ。先客が数人カウンターに陣取っているので、一番奥の隅に座らせていただいた。すぐに出てきたお通しはなまこ。これならビールはやめて日本酒にするべきだった。しかし、すでにビールを注文してしまった後である。気を取り直して、注文だ。尾道と言えば穴子。今日は白焼きでもらってみよう。出てきた白焼きは、ふっくらとして、とても美味しそうだ。何よりも香りが素晴らしい。香ばしいが、清涼感がある。口に含むとさわやかな味と香りが口いっぱいに広がる。やはり、名物は侮れない。カウンターに座っているお客さんは、みんな常連らしく、にぎやかにやっている。これこそ、地元に根付いた店なのだろう。次から次へ話題が変わっていく。その話に乗れない自分がちょっと寂しいのだが、地方へ旅して、その地域の老舗の居酒屋の片隅で、常連さんたちの会話を聞いているのもなかなかだ。(後は番組をご覧ください。) |
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| もう一軒、尾道と言えばこの店と言うバーにも行って見なければならない。「暁」だ。尾道に来る有名人のほとんどが立ち寄ると言う、超有名店だ。店の前に立つと確かに古い。そして、古いだけでなく、木造3階建ての建物はバーとしての重厚さを十二分に兼ね備えている。店内は複雑なカウンターと、ホコリまみれのバックバー。天井に掛けてあるピッチャーも何年掃除をしていないのだろう。まるでわざとそうしたようだ。しかし、カウンターの中に入っている女性陣の美しさと、所狭しと壁に張ってある来店有名人の写真がまさに圧巻だ。かなり昔の写真もあり、もう他界された方や、若かりし時の姿が目にできるのは、かなり貴重だ。カウンターのところどころに座った客の隙間に腰を下ろし、ジントニックをお願いした。カクテルを作るのは、カウンターの真ん中に構えたマスターだった。バーテンダーらしくベストとネクタイでビシッと決めて、カクテルを作ってくれた。大変美味しい。まわりの女性たちは、マスターの作ったカクテルをサービスする役のようだ。何十年も営業している店だが、女性たちは大変若い。みんな20代だろう。常連のお客さんは、皆さん女性たちと楽しそうにしゃべっている。私も、二言三言目の前の女性と話してみたが、なんとなく気まずい。美人の女性を前にして、緊張する年でもないが、何を会話して良いものやら。やはり、自分としては男臭い居酒屋やバーのほうが落ち着く。申し訳ないが、一杯で店を後にした。 |
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| もう一軒、老舗でユニークなバーがあると聞いていた。なんと、マスターは貝のコレクターだそうだ。店の名は「ロダン」。入り口の上には、どこで仕入れてきたのか、大きなシェル石油の看板がある。店内は、まるで貝の博物館。カウンターに埋め込まれたガラスの下にも、色とりどりの貝が並んでいる。かなり広いフロアーの回りは、貝に限らず海の珍しい生物の標本が並んでいる。シャンデリアも当然貝だ。徹底している。目をきょろきょろさせながら、ギムレットをお願いした。尾道で育ったマスターは、海が好きで20歳のころから貝集めを始めたそうだ。幾つぐらい集めたのか自分でも分からないと言う。しかし、まだまだ欲しい貝があると言うのだから恐れ入る。今も年に一度は東南アジアへ出かけてコレクションを増やしているとのこと。私も海が好きで、ダイビングもやるのだが、こんなにすごいコレクションは見たことも無い。すごい人がいたものだ。ギムレットも大変美味しく、最後にはオリジナルの貝殻のグラスに注いだ、オリジナルカクテルもいただいた。ちょっと甘いが、南の島の砂浜の味がした。(後は番組でご覧ください。) |
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| 居酒屋2軒に、バー2軒回ったが、ちょっと小腹が空いたので、最後にもう一軒居酒屋に行ってみよう。ホテルのすぐ近く「高原誠吉食堂」だ。まだ新しい店ながら、しっかりしたものを出すと言う。何の変哲も無いドアを開けると、小さいが、シンプルで清潔な店内が広がった。カウンターとテーブルが一つ。二階には別室があるようだ。カウンターの隅に座り、メニューを見ると、なかなか魅力的な物がある。店主は若いが、どこかの料理店でしっかり修業したらしい。広島の地酒と鴨ロースを注文。ついでに、肉春巻きもお願いした。もう時間も遅いので、客はまばらだ。注文した品はすぐに出てきた。鴨ロースは濃厚な味で、これも濃厚な日本酒にぴったり。ゆっくりとマリアージュを楽しんだ。ご主人の他にお手伝いが二人ほどいるのだが、みんな黙々と仕事をしている。まだ、お客さんとの会話を楽しむ余裕はなさそうだ。東京などに最近できているおしゃれな居酒屋とは一線を画す、しっかりした店だ。これからに期待したい。 |
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| 初めて訪れた尾道の地だが、海と山に挟まれた坂の多い街に、人々が寄り添って生活をしている雰囲気がとても郷愁を誘った。映画の舞台になるわけだ。そして、意外に若者たちが頑張っていた。東京や大阪のような大都市ならいざ知らず、地方の都市に若者が新しい店を出すのは珍しいのではなかろうか。昔からの飲み屋街には老舗の居酒屋やバーがあり、少し離れた所に若者が新しい店を出す。呑み助の数が増えることは無かろうが、棲み分けをはっきりしていけば、これからの尾道はますます面白くなっていくことだろう。 |