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以前、番組では三重県松坂にお邪魔し、大変美味しい松坂牛をいただいた。しかし、三重県には伊勢と言う有名な土地があるのに、未踏だ。そこで、堺から南海電車、近鉄特急を乗り継いで向かってみた。
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| 紀伊半島を横断するコースだが意外と近い。午前中にはもう伊勢のホテルに着いていた。早速、散策の地の下見に河崎の町へ出かけた。江戸時代、お伊勢参りの人々のために魚などの食料を供給したと言う、古い問屋街である。勢田川の河畔に並ぶ家々は、昔の面影を多く残し、散歩していてもなかなか楽しい。今では、喫茶店やレストラン、美容院などに改装している店も多いが、その中に「つたや」という伊勢うどんの店を発見。あまり美味しいと言う噂を聞かない伊勢うどんだが、私は食べたことが無い。一度は食べなければと思い、早速入ってみた。 |
| 店内は普通のうどん屋さん。そして、頼んだ伊勢うどんは真っ黒な汁に太いうどんが入っている。一口すすると、その食感に驚いた。腰が無い。そして、汁がからい。からいと言ってもうどんが太いので、ちょうど良いのだが、汁だけはとても飲めない。名古屋の味噌煮込みうどんとも違い、まして讃岐うどんとは正反対のうどんだ。しかし、巷での噂ほど不味くは無い。いやむしろ想像していたより美味しい。なんだか田舎のバーちゃんが作ってくれるような懐かしさを感じた。 |
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| ちょっと休憩でも思いホテルに帰ったが、フロントに近くの飲食店マップなるものを発見。手にすると、「向井酒の店」と気になる名前が目に止まった。居酒屋は名前も重要だ。いかにも古いと思える名前に惹かれたのだ。さらに、営業時間が3時からではないか。これ幸いと、すぐに向かった。 |
| ちょっと繁華街からは離れたところにぽつんとその店はあった。古めかしい看板に、木の引き戸、そして暖簾。外観からしてよさそうだ。店内に入ってさらに驚いた。古い一枚板のカウンターに小上がり。一つだけあるテーブルの天板は10センチ以上もの厚さだ。3時から営業といってもまだ早い時間なのでお客さんは少ない。 |
| 若旦那の前に座り、まずは生ビールをお願いした。そして、貝柱のぬただ。以前どこかで「伊勢では、真珠貝(アコヤガイ)の貝柱を食べる」と聞いたことがあったので頼んでみたのだ。真珠をとった後の貝は当然捨ててしまうのだろうから、食べられるところは食べた方が良いに決まっている。小柱風の貝柱は、円ではなくちょっと勾玉風の形をしている。歯ごたえがありとても美味しい。これは良い。早速ビールから日本酒に変えた。日本酒は日本盛りのみ。古い居酒屋では灘の酒しか置いていないところが多いが、ここもそうだった。しかし、樽酒の冷酒は樽の香りがついてとてもおいしい。大メーカーの酒もそこそこ飲めることを再認識した。 |
| もう一つ、地元でしか食べられないという、かいづの干物を食べてみた。かいづとは黒鯛の子供のことだそうで、それを腹開きにして干したものだそうだ。腹開きなので、丸い形をしており、そこから尾びれがちょっと飛び出している。炙って出てくるのだが、これも大変おいしい。伊勢特有のものを二つ食べて大満足。 |
| 若旦那に店の歴史を聞くと、「私は三代目で、親父もまだ元気で働いています。もう60年ぐらい前に酒屋から居酒屋へ変わったと聞いてます。」ときちんと答えてくれた。最後に、赤鳥のじぶ煮が大変おいしかったことを付け加えておこう。(後は番組でご覧ください) |
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| 次は、繁華街と聞いていた新道商店街裏へ行ってみた。すると、スナックが中心だが、かなり広い範囲に飲食店が多く散らばっている。これは探しがいがありそうだ。その中でも、もっとも目を引く「一月家」にまず入った。大きな暖簾に、大きな引き戸。店内は長いカウンターにお客がびっしり。テーブル席も相当な数だが、それなりに客が座っている。天井が高いことも手伝って、銀座の三州屋を三周りぐらい大きくした感じだ。一目で大衆酒場だとわかる雰囲気はすばらしい。カウンターの隅に座らせていただき、再び生ビールとボラの酢味噌をお願いした。これだけ大きな店ではゆっくり酒を楽しむという雰囲気ではないが、すごい活気だ。聞くと昼間っから営業しているという。東京下町魚三酒場の伊勢版というところか。昼間、伊勢神宮以外にはあまり人影を見なかったが、こんなところにみんな集まっているとは、相当酒飲みの町なのかと疑いたくなるくらいだ。 |
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| まだまだ店はあるようなので、次から次に回ってみた。「五恵門」「魚鈴」「ざこば」「にしもと」「都吉」。どこも伊勢の地の食材を使った刺身、料理が大変おいしいのだが、酒がいまひとつ。そして、「にしもと」を除いては、みんな比較的新しい店だ。ちょっと拍子抜け。 |
| 時間も遅いので、最後に、JR伊勢市駅前のバー「4th club」へ寄ってみた。小さいファッションビルの4階。ひっそりとしたそのバーは、平日のせいだろうか客は誰もいない。小さなカウンターの端に座り、ジントニックを頼んだ。若手のマスターは、見ず知らずのおじさんが一人、こんな時間に入ってきたので驚いている。新しいがなかなかシックにまとめられた店内と同じく、ジントニックも美味しかった。聞くと、マスターは雇われだそうだ。「店のオーナーに聞けば、良い居酒屋やバーが分かるかもしれないが、私が知っているのは『黒船屋』と言うバーだけです。」と、何とか一つの店を聞き出した。もう一杯、モスコミュールをいただき、店を出た。 |
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| その「黒船屋」と言うバーはすぐに見つかったが、店は閉まっていた。こんな時間なので仕方がない。今日はホテルに引き上げよう。一軒しか決まっていないので、予定を延ばし明日もう一泊することにした。(実はもう一軒、この日は休みと聞いていた店があったのだ。) |
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| 次の日、昼間はすることがないので、ゆっくり起き出し、昼も営業していると言う「あじっこ」で昼食とした。昨日散策した河崎の町の古い民家を改造して営業している店で、伊勢海老雑炊が名物らしい。昔の造りなのか、狭い玄関を入り、靴を脱いで上がる。もう一つの引き戸を開けると、掘りごたつのようなL字のカウンターが厨房を囲んでいた。座るとすぐに「伊勢海老雑炊で良いですか?」とご主人が話しかけてくる。昼はそれを食べに来るお客さんが多いのだろう。私も、それが目的できたのだから、すぐに「ハイ」と返事をした。 |
| 目の前でできていく雑炊はなかなか面白い。お腹が減っている事もあり、凝視してしまった。熱々の雑炊はえびの香りがして大変美味しい。夜もう一度寄ってみないことには居酒屋としての雰囲気は分からないが、ここも候補の一つに挙げておこう。 |
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| 夕闇も迫り、河崎にもう一軒探しておいた、「虎丸」に向かった。昨日は定休日だったが、今日は営業しているははずだ。古い蔵を改装して営業しているらしいが、店内も高い天井で良い雰囲気だ。開店早々と言うのにカウンターやテーブル席にはお客が半分ほど。一人の私はカウンターの端だ。 |
| 目の前に張られたメニューが圧巻。30や50はあるだろと思われる品数で、迷ってしまう。ここは一つ、釣り立てとある黒鯛の刺身をいただこう。そして、ビールはエビスの生。 |
| 待つ間に店内を見回すと、意外に若いお客に混じって中年がいる。若いお客さんばかりの店は、今流行の店で、肴はたいしたことない店が多いのだが、これは期待が持てる。さらには、隣に一人の中年の男性客が入ってきた。これはこれは、店の第一印象とは違うかもしれない。そして、出てきた黒鯛を食べて、期待が確信に変わった。釣り立てと書いてあるのは、それほど自信があると言うこと。まさに、期待通りだ。こりこりとして甘さもある。これだけの黒鯛を食べたことはない。もうこの店にお願いしようと決めていた。 |
| そして、酒を日本酒に変えようとメニューをもらうと、数は少ないが全国の地酒と伊勢の地酒が揃っているではないか。天狗舞の山廃純米をぬる燗にしてとお願いすると、快く引き受けてくれた。その後、サメタレ(さめの身を干したものらしい)や煮豚、焼きなすなどをいただいたが、どれも美味しい。地ビールの千成ビールはちょっと首を捻ってしまったが。その間、ずっと店は満員。ご主人と話の出来ないまま店を出る事になってしまったが、最後に名刺を女性にお渡しし、「美味しかったとご主人に伝えてください」と言って、店を出た。 |
| (後日、取材のお願いでご主人に電話したが、最初の答えはNG。良い肴が揚がらないときは店を休むので、お客さんに対して申し訳がない。これが理由。その事をちゃんと放送しますので、と再度お願いしてやっとOKをいただいた。後は番組でご覧ください) |
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| 良い店が、見つかった。後はバーかなと思い、昨日教えていただいた「黒船屋」へ向かったが、今日も営業していない。仕方ない。最後に、もう一度「向井酒の店」に寄って帰ることにしよう。 |
| 初めてお邪魔した伊勢だったが、魚のうまさには感激した。東京の都心ではいくら美味しいとはいえその日に揚がった魚が、その日に食べられることはほとんどない。それが、やはりこういった地方都市なら可能なのだ。また是非ゆっくり魚と酒を味わいに来たいものだ。 |