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新ニッポン居酒屋紀行は5月の第一週をもって休肝日に入る。その最後の一回をどうしようかと悩んでいると、太田さんから最近流行の焼酎居酒屋を取材するのはどうかな?と有難い提案があった。私自身も日本酒より焼酎を飲む機会が多くなっているなと感じていたので、渡りに船だ。
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| 焼酎居酒屋と言えば、記念すべき当番組の第一回に登場した、鹿児島の「焼酎天国」が思い出される。もう六年以上前に取材させていただいたのだが、そのころはこんなに焼酎の人気が高くなるとは思いもよらなかった。そして、もう一軒私の記憶に残っているのは、阿佐ヶ谷の「かわ清」だ。もう何年も前に二三度お邪魔したことがある。創業は相当古く、女将さんもかなりのご高齢で、真に良い味を出している。ただ、焼酎専門店なので、取材は二の足を踏んでいたのだ。今回は、焼酎を取り上げようと言うことになったので、「かわ清」に是非お願いしたいものだ。 |
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| まず、一軒目に訪れたのは赤坂の「まるしげ」。最近良く雑誌に登場している店で、太田さんも私も、今は無き渡辺文雄さんに連れて行ってもらった思い出の店である。太田さんもかなり気に入っているらしく、ロケハン前に取材を決めていた。5時の開店にあわせて店への階段を上がった。いつもは、何人かで連れ立ってくるのでテーブル席だが、今日は一人。初めてカウンターに座った。まずは生ビール。焼酎居酒屋のロケハンなので焼酎を飲まなければとは思うが、最初はなんと言っても生ビールだ。冷えたジョッキが心地良い。そして、顔見知りでもあるので、早速取材の話をすると、なんと、太田さんの文章はよく読んでいるのだが、お顔が分からないと言う。私も名乗って飲んだ事はないが、太田さんも名乗らずに飲んでいたようだ。渡辺文雄さんや山同敦子さんなど業界の方が沢山来ているのに、皆さんかって気ままに飲んで行ける気の置けない店だ。取材はすんなりOKをいただき、まだ時間も早いので、焼酎と肴を注文。焼酎は沖縄泡盛「春雨」の前割を燗にしていただき、肴はカツオのハラミをあぶってポン酢を掛けたものだ。初鰹なのであまり脂は乗っていないが、ハラミだけあってうっすらと脂の甘みがする。そして、いつもはロックか水割りで飲んでいる「春雨」なのだが、燗もなかなかおつなものである。寒い冬にはちょうど良いだろう。しかし、常夏の沖縄では燗で飲んだりはしないだろうが。(後は番組でご覧ください) |
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| 赤坂を出て、その足で市ヶ谷へ向かった。最近特に焼酎の品揃えが良いと評判の「喜多蔵」だ。何年も前から存在は知っていたのだが、まだ一度も入ったことは無かった。店内はまだ早い時間なのに満員。かなりの大型店だが、カウンター、ボックス席ともに人で溢れている。メニューにある焼酎の揃えも凄いが、従業員の数も凄い。繁盛店の実力を見た感じだ。一人客はほとんどおらず、グループでわいわい楽しんでいる。待てば入れるのだろうが、今日のところは諦めよう。近いのでまた来れば良い。 |
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| 次の日、「かわ清」にお邪魔しようと思っていると、当番組のカメラマンから連絡が入った。「かわ清」の女将さんが入院されたとの事。そのカメラマンは「かわ清」の常連で、定期的に顔を出しているから間違いは無い。さて困った。最初から取材をさせていただこうと思っていた店がNGでは、どこか他の店を探さなければならない。昔のダンチュウや、他の情報誌を引っ張り出し、焼酎居酒屋を探した。すると、祐天寺に「花心」なる店を発見。早速行ってみた。祐天寺の駅から10分以上歩いただろうか。住宅地の真ん中の小さな商店街の入り口にその店はあった。コンクリートの打ちっぱなしがモダンな感じだ。店内にはご主人の書がギャラリーのように飾ってある。そのことを話すと、ご主人は書道家で実際にギャラリーとして使っているそうだ。まずビールをお願いし、お通しで、一杯やった。次に何かお勧めの焼酎をとお願いすると、「六代目百合」と言う焼酎を勧められた。ご主人が今一番ほれ込んでいるお酒で、なんとラベルの文字はご主人の書だそうだ。太田さんが雑賀や竹鶴のラベルデザインをされたのは知っていたが、筆書きのラベルの字を書いた方にはじめてお会いした。そのラベルの力強い文字と同じく、味もかなり力強く、どっしりと舌に絡みつく。たいした酒だ。この店は、日本酒の揃えも素晴らしい。そんな話をご主人とする内に時間になった。入るときに予約が入っていて、それまでで良ければと言うことでカウンターに座ったのだ。落ち着いてじっくり飲むには良い店だ。ここも候補に挙げておこう。 |
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| 次に向かったのは、千駄ヶ谷の「きばいやんせ」。ここも、存在は知っていたのだが、入るのは初めてだ。黒壁の小さな一軒家だが、悪く言えば掘っ立て小屋のよう。店内も手作りな感じだ。カウンターの上に並んだ一升瓶が壮観で、その前に腰を下ろした。まだ早い時間だが、そのうちに込み合うのだろう。この狭い店にしては店員が沢山いる。目の前に並んだ焼酎の中から、「八幡」をロックでもらった。そして、アテはごぼうの天ぷら。ごぼうは太めに切ってあり、ざくざくと言う感じで美味しい。八幡の豊かな味にぴったりだ。壁には、島津藩の証である、丸に十の紋が飾られている。鹿児島出身のご主人なのだろう。いかにも焼酎専門の店らしい。しかし、その上に仙台太郎がニコッと微笑んでいるのがなかなかおかしい。そのうちに沢山のお客さんが押しかけてきて、店は活況を呈してきた。まだ若い店員さんばかりなので、客も若い人たちが中心。中年のおじさんが長居するのは禁物だ。早めにお暇することにしよう。 |
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| 次は、4年前ぐらいに一度お邪魔したことがある四谷荒木町の「羅無櫓」だ。車も少なく、歩いていて気持ちの良い飲み屋小路にある小さな店だが、入り口の感じがとても良い。ドアを開けて中に入ると、低めのカウンターに低めの椅子で、ちょっとスナックのような作りだ。酒瓶はお客の背中側に並んでおり、その数は200本を越えるだろう。これだけそろえた店はそう無いだろう。カウンターの端に腰を下ろし、黒糖焼酎をロックでいただいた。お通しが三品も付くのでそれで暫らくは飲める。以前来たときと変わらず、ご主人は柔和な笑みを浮かべて、人を落ち着かせる。人徳なのだろう、ご主人を目当てに通うお客さんが多いと聞く。今日は、前割のお燗をもらってみよう。それと、馬刺しだ。予め水で割った焼酎を、甕に3〜4日寝かせたものを丁寧にチロリで燗してくれるのがなんとも味わい深い。お勧めでいただいたので銘柄は失念したが、なんともやわらかい。芋の甘みがなんとも心地よい。それにあわせた馬刺しも大変美味しい。こんな酒場があるのだから、焼酎の奥は深いと言うことだ。大変良い気分になり、取材のお願いをした。太田さんも気になっていた店でもあり、ここにお願いをしよう。ご主人は快くOKを出してくれた。(後は番組でご覧ください) |
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| 今回は、東京と言うこともあって、もっと店を回ってみたかったが、意外にもすんなりと決まってしまった。まだまだ、焼酎専門の店は沢山あり、雑誌やテレビでも多く紹介されている。今度機会を見つけて、もう一回りしてみるのも良いかもしれない。それにしても、冒頭で書いたように、ここ数年で本格焼酎を取り巻く状況は大きく変化したように思う。私が酒を飲み始めたころ(二十数年前)は、沖縄の泡盛をお土産に貰っても誰も喜ばなかった。それがどうしたことか、春雨などは地元那覇でもほとんどお目にかかれない。(かえって、東京の方が多く見る)蔵元は、卸売業者に売っているだけなので、自分の酒がどこでどう流通しているか分からない状況だ。そこへ、本格焼酎のブームが来たものだから、仲買業者がどんどん高く売れる方へ品物を流すようになった。消費者も、ブームだからと言って、わざわざ高い酒を飲む必要は無い。自分の舌で確かめて、安くても美味しい焼酎を飲んで欲しい。それが本当の酒文化を創っていく事になる。(と言う私も、春雨が本当に美味しいので、ある店でキープさせていただいていますが) |
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| 日本人の悪い癖なのが、右へ習えだ。流行の日本酒、焼酎にみんな右へ習え。新しい物に挑戦し、自分の舌を信じて、好みを作ると言うことをやってみてはどうだろう。更に言えば、店もそうだ。確かに雑誌やテレビで紹介されるような店は評判店だけあって、安心して入店も出来、それなりの満足を与えてくれる。しかし、自分の足で見つけた店が居心地の良かったときの感動は絶対に忘れられない。たしかに、失敗の店も多いが、それなりにみんな個性があり良い所はあるものだ。そんな隠れた店をこれからもどんどん探して行きたい。特に地方の何の変哲も無いような町で、ふらっと入ったような渋い居酒屋を。しかし、番組で放送するとまた違った雰囲気になってしまう危惧もある。そこのところをよく理解して、皆さんには番組を見て欲しいと言ったら、放送する側の我がままだろうか?放送する側と、視聴する側の意識の違いに日々悩む制作者の独り言でした。 |
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| 今年の「新ニッポン居酒屋紀行」は、今回で終了です。2005年9月の放送でまたお会いしましょう。次回シリーズは、もっともっとディープな番組を目指しますので、宜しくお願いいたします。 |