関連DVD/書籍情報

愉楽の銀座酒場

太田和彦著愉楽の銀座酒場 09年5月発売!! 1,700円(税込み)

太田和彦の日本百名居酒屋

「太田和彦の日本百名居酒屋」DVD 1~3巻 09年4月発売!! 各3,990円(税込み)

 


 冬に北へ旅するのは、酒飲みにとってはまことに都合が良い。雪景色の中、赤提灯の明かりに惹かれて居酒屋に入り、熱燗をぐっとやれば、これに勝る幸福感はない。

しかし、今回はその気持ちをぐっと抑えて南へ旅立った。寒いのも良いけれど、四国なら暖かいだろうと思ったからだ。

 松山空港から松山市街の中心地、大街道まではバスで20分ほど。便利だ。そこから散策に松山城を訪れる予定なのだが、その前に昼食でもと思い、「車井戸うどん」に入った。何の変哲もないシンプルなうどん屋なのだが、頼んだたぬきうどんは大変おいしかった。さすがうどん天国四国である。
 その後松山城へ上るリフトへ乗ってみて驚いた。南国と思っていた松山は寒いのである。隣を併走しているロープーウェイが羨ましい。確かに四国の山々に囲まれた高知は暖かいのだろうが、その山脈の北側に位置する松山はやはり寒いのだ。

 寒い寒いといっていても仕方がないので、早速居酒屋めぐりに出かけた。4時から営業していると聞いた「由利」である。太田さんが、昔訪ねた店で、私も著書でよんでいたのだが、ちょっと様子が違う。太田さんの本の中には、古い一軒家で、とても良い雰囲気の居酒屋だとあった。しかし、店の前に立つと入り口は確かに古いが、ビルの1階で、それほど古いとは思えない。店内に入るとかなり年をとられた女将さんが一人カウンターの中で準備をしていた。あまりに寒いので燗酒を一杯やりながら女将さんにお話を聞くと、前の店は建物もろとも綺麗に処分し、今のところに移って6年だそうだ。もう80歳を迎える女将さんは、前の店を処分するときもう引退しようかとも考えたが、長年通う常連さんから続けてくれと言われ、一人で細々やっているという。奥の小上がりの脇に昔の写真があり、そのころ来てみたかったとつくづく思った。

 次の「いこい」は、前回取材に来たときに最後に寄った店で、それ以来、松山に来るたびに寄っていた。松山といえば「露口」と「いこい」と言うほど有名店だが、気取らず飾らず、普通の店なのがとてもいい。久しぶりに女将さんの前のカウンターにすわりおでんを頂くと、全く変わらない。この何時来ても変わらない安定感が長く続く秘訣だろう。嬉しいことに女将さんは私のことを覚えていてくれ、取材の交渉もすんなり受けてくださった。その後、しばらく仕事を忘れ女将さんと話しながら何杯か頂き、とても良い気分で店を出た。(後は番組でご覧ください)

 一軒決まったが、実は後は当てがない。「露口」に行って情報を教えてもらおうと思ったが、まだ開店時間前のようだ。ふと見るとすぐ前に「小判道場」という古そうな店があったので入ってみた。店内はかなり長いカウンターにいくつかの小上がり。お母さんとお父さんの二人で営業しているようだ。何かお勧めの刺身はと聞くと、カワハギの刺身がありますと言われ、素直に従った。客は私一人。広い店内に一人ぼっちなのがちょっと寂しい。この前に寄った「いこい」が開店と同時にどんどん客が押しかけるのとは大違いだ。届いた、カワハギの刺身は大変おいしく、なんでこの店にはお客さんがあまり来ないのだろう?と首をかしげるほどだ。

 「露口」の開店時間になったので、口開けで入った。マスターも私の顔を覚えていてくれ、昔話に話が弾んだ。小さい店だが何とも居心地が良い。マスターとママさんの絶妙な会話と、飾り気はないがとても美味しいカクテルが、みんなの心を掴んで離さないのであろう。ロケハンなので、ゆっくり飲んでいるわけにも行かず、居酒屋とバーの情報を教えていただこう。しかし、露口さんも古い居酒屋はもう「いこい」しか残っていないという。バーも、あまり古い店は残っていないが、と言いながら何軒か教えて頂き、早速向った。

 まずは、ジャズのライブハウス、「MONK」。次に若手だがしっかりした技術を持つ「セントバー」。続いてバーテンダー歴20年以上のベテランマスターの「IKEUCHI」。最近店を移動した「信天翁」。着物でシェーカーを振るというマスターとゴージャスな内装で有名な「ゆめまぼろし」。店名と外観に惹かれて入った「れんが亭」

 全ての店で一杯づつ飲んで、次の店に移動したので、一軒一軒はあまり記憶にないのだが、その中で最もキリッとしたギムレットを出してくれた「IKEUCHI」へ戻ってみた。店内はお客さんで満員。マスターもとても忙しそうなので、ジントニックを飲んで話が出来るまでしばらく待った。その間、お客さんとマスターの会話を聞いていると、とても楽しい。先ほど頂いたカクテルの味と、軽快な会話があるこの店にお願いしよう。取材のお願いをするとちょっと躊躇されていたが、やっとOKを頂いた。

 今回は居酒屋一軒に終わってしまった。それと言うのもどこで聞いても「古い店はもうないね。」と言う返事。松山に限らず地方の町でも、どんどん大手の居酒屋チェーン店が進出してきている。唯一、沖縄を除いては。明日は酒飲み王国高知なので、期待してホテルに戻ることにした。 


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