関連DVD/書籍情報

愉楽の銀座酒場

太田和彦著愉楽の銀座酒場 09年5月発売!! 1,700円(税込み)

太田和彦の日本百名居酒屋

「太田和彦の日本百名居酒屋」DVD 1~3巻 09年4月発売!! 各3,990円(税込み)

 

髭コラム 第十四回長崎編

 長崎はこのシリーズでは3回目。東京、大阪などの大都市以外では最多の登場回数だ。しかし、まだまだ良さそうな居酒屋が多くあり、太田さんも雑誌などの取材で、何回も訪れているというので再び長崎へ向かった。
 以前の放送では、めがね橋界隈と出島に行ったので、今回はちょっと足を伸ばして、風頭公園の竜馬像を見に行こう。しかし、これが大変な道のりだった。距離は近いのだが、とても急な坂だ。長崎は坂の街とは知っていたが、これほどとは思わなかった。竜馬通りの坂をやっと上りきると、長崎市内が一望できる素晴らしい眺めが広がった。そこに立つ坂本竜馬の銅像は、大きさこそ高知桂浜の像まではいかないが、大変立派で威風堂々としていた。(後で聞いた話だが、風頭公園まではバスがあるそうです。実際のロケのときはレンタカーを使ったので楽だったのですが、皆さんはバスで近くまで行き、竜馬通りの坂を下ってくるほうが利口です。)


 夕方になり、まずは太田さんお勧めの「安楽子」へ向かった。実は、前に一度入ったことがある。前回の下見の時にちょっと寄ったのだ。その時はあまり時間が無く、髭コラムにも書かなかったが、なかなか良い店だと記憶していた。4時30分の開店時間ちょうどに暖簾をくぐった。古い建物を大事に使っている様子がとても気持ち良い。
 奥と二階に部屋があるようだが、一人の私は当然のようにカウンターに腰を下ろした。すると、前回来た時には確か居なかった息子さんが板場に立っている。以前お伺いしたときの記憶では、熟年のご主人に女将さん、そして、手伝いの方だったように思ったのだが、私の記憶違いか。まずは、生ビールと、壁に掲げられたメニューの中からしめ鯖と平貝のあぶりをお願いした。店内を良く眺めると、相当古い店で、息子さんが主に板場を任されているようだ。心強い息子さんがいてご主人も女将さんも安心なのだろう、顔の表情がとてもにこやかだ。そして、出てきたしめ鯖の美味しさに驚いた。五島の鯖とのことだが、やはり漁港近くで食べる魚は美味しい。そうしている間に隣にお客さんが座り、ネギのぬたのようなものを食べている。聞いてみると、ネギ巻とのこと。細いネギの白い部分に青い部分をぐるぐる巻きにしたもので、それを酢味噌に付けて食べる。私も右に倣って頼んでみたのだが、しゃきしゃきした食感がとても面白く、ネギの辛さと酢味噌の甘みがとても良くあう。最後におばけ(さらし鯨)をもらうと、美人の女将さんが声をかけてくださった。そこで、太田さんに聞いて来ましたと言うと、「とっても素敵な記事を書いていただいて良かったわ」と嬉しそうだ。早速取材のお願いをして、次の店へ向かった。(後は番組でご覧ください。)


 次も太田さんが雑誌で取材した「こいそ」だ。しかし、地図を頼りに探すのだが、見つからない。それもそのはず。どう見ても地図には載っていないような細い路地にその店はあった。生け簀が置かれた入り口を入ると、長いカウンターの上に20種類以上はあると思われる大皿料理がすらっと並んでいる。これだけの料理を作るのは大変だろうが、以前にも2軒そういった店があった。姫路の「寿」と堺の「九十九」だ。どちらもとても良い店だったので今回も期待が持てる。まだ誰もいないカウンターの隅に腰を下ろし今度は日本酒の燗酒をお願いした。福岡の酒だそうでちょっと残念。しかし、長崎にはほとんど地酒は無いので仕方の無いことか。お通しはアナゴと鯛の子の煮つけ。とても美味しい味付けだ。カウンターの上に並んだ大皿から、きびなごと魚の切り身煮も頂いた。どの料理もちょっと甘めの味付けで大変美味しい。物静かなご主人は黙々と仕事をこなしていくが、料理の腕は相当しっかりしている。太田さんの記事によると、美人の女将さんがいるとのことだったが、今日はお休みなのか、姿が見えない。ちょっと残念。だが、まだまだ行きたい店があるので早めに退散しよう。(この時には取材交渉せずに店を出たが、後日電話で取材のお願いをしました。後は番組でご覧ください。)


 次は、おでん「はくしか」。以前取材した「桃若」と同じく古いおでんやさんだと聞いていた。路地裏にある、いかにも古そうな引き戸を開けると、コの字のカウンターは人で一杯。周りのテーブルもほとんど埋まっている。さすがに有名店だ。カウンターの一番端がかろうじて空いていたのでそこに腰を下ろし、再び生ビールをお願いした。おでんは大根、つみれ、豆腐だ。カウンターの中にはお母さんが三人。忙しくホールとの間を行き来している。もう少し時間をずらせばお母さんたちと話もできたのだろうが、満員のこの状態では話しかけるのもはばかれる。おでんは薄口で出汁が良く効いて大変美味しい。お客さんもその事を良く知っているのだろう、次から次へ注文が入る。みんな何人かのグループで来ているようで、楽しく談笑しながら杯を傾けている。一人客は私だけだ。少々寂しい気分になり、店を抜け出した。


 次はバーに行ってみよう。これも太田さんが記事にした、「ランプライター」だ。もう良い時間なのだが店には客は無く、初老のマスターとママさんがカウンターの中に座っていた。私もマスターの前に腰を下ろし、周りを見て驚いた。壁と言わず天井と言わず、いたるところにコースターなどのバーグッズコレクションが飾ってある。その数たるや到底数え切れる量ではない。実際、後で聞いたのだが、マスターも数は分からないらしい。ジントニックをお願いし、話を聞いた。マスターはNBA(日本バーテンダー協会)の重鎮で、もう引退したが以前は全国大会の審査委員も務めていたという。今は、息子さんもバーテンダーとして店を手伝い、ママさんを含め3人で店を営業しているそうだ。今日はたまたま息子さんがお休みなので、お二人だ。マスターも、ママさんも柔和な人柄で、ゆっくりお話ができて大変面白かった。ジントニックの後にギムレットとホワイトレディーも追加し、半分千鳥足で店を後にした。(後は番組でご覧ください。)


 もう居酒屋2軒、バー一軒の当てが着いたので、最後は以前取材した「桃若」で締めよう。ここにはサッポロラガー(赤星)があるので早速その瓶ビールを頼み、大根と牛蒡天を頂いた。相変わらず美味しい。そして、ご主人夫婦と息子さんの人柄が素晴らしい。そこそこ込み合っている店内だが、一人客も寂しい思いをしなくてすむ雰囲気だ。最後におでんのつゆで作ったおじやを頂いて大満足だった。


 もうホテルに帰ろうと銅座付近を歩いていると、ちょっとしたビルの二階に「トミオ」というバーを発見した。通り側が前面ガラスなので店内の様子が丸見えだ。カウンターの中でシェーカーを振っているマスターと一瞬目があったような気がして、店への階段を上がってみた。店内は、今風のインテリアでマスターご夫婦が営業されていた。お客さんはカウンターにカップル一組。私は奥のカウンターに腰を下ろし、再びジントニックを頂いた。聞くと、旅好きで、札幌のバーヤマザキへもお邪魔し、切絵を切って頂いたそうだ。実は私も切って頂いた経験があるので、ひとしきりその話で盛り上がった。もう一杯オリジナルカクテルを頂き、気分良くホテルに戻った。


 もう3回目になる長崎だが、まだまだ奥が深い。思案橋、銅座付近の店はまだまだ数は多いし、そのほかの地域にも良い店が目白押しだそうだ。そして、何と言っても長崎は歩いていて面白い。土地が狭いので坂道が多く、まっすぐな道もほとんど無い。一つ間違えると、自分がどこにいるのか分からないことも度々だ。そこが、面白くて、また長崎に来たくなるのは、都会の四角四面の生活に疲れたからだろうか?



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