関連DVD/書籍情報

愉楽の銀座酒場

太田和彦著愉楽の銀座酒場 09年5月発売!! 1,700円(税込み)

太田和彦の日本百名居酒屋

「太田和彦の日本百名居酒屋」DVD 1~3巻 09年4月発売!! 各3,990円(税込み)

 

髭コラム 第十三回青森編

 青森に居酒屋紀行シリーズでお邪魔するのは二回目。しかし、前回のロケハンでも数軒行っているので、大体見当はついていた。まずは、散策の候補にと思っていたねぶたの里へ向かった。山間の倉庫みたいな建物に本物のねぶたが何基も展示してある。その姿は圧巻だ。これが本当に祭りの中を練り歩く姿は一度見ないと実感できないだろう。暗い中にひっそりとあるねぶたは何かさびしそうなので、市内の棟方志功記念館へ向かった。棟方志功は日本国民なら誰でも知っている版画家。しかし、志功は版画の版に板という字を用い、板画という言葉を使っているとは知らなかった。お恥ずかしい。
 夕方になり、前回のロケハンの時にもお邪魔した「六兵衛」へ入った。実は最初からこの店にお願いしようと思っていたのだ。良い店だと分かっていたのだが、前回のときは最後に酔っ払って行ったので、取材の交渉など出来なかったのだ。5時ちょうどに店への階段を下りると、そこにはすでに一人のお客さんがいる。そして、ご主人はなにやら出かける雰囲気だ。「ちょっとお通夜でして。料理があまり出来ませんがそれでも良かったら」と奥さんが招き入れてくれた。まあ店の雰囲気は記憶しているので問題無いなと、カウンターの手前に座った。酒は「田酒」の燗だ。お通しはつぶ貝。さらにアンコウの肝和えをいただいた。
 店内は、青森の郷土の品で埋め尽くされており、民芸居酒屋風。ご主人はカウンターの中でにこやかに料理を作りながら客と冗談を飛ばしあっていたことを覚えている。今日は、ご主人の代わりに奥様がお相手してくれた。奥様はいつもは店に出ていないようだが、大変優しい方で、取材のお願いをすると「主人に話しておきます。」と丁寧に受けてくれた。(後は番組でご覧ください。)


 続いて向かったのは「ゆうぎり」。この店も前回ロケハンのときにお邪魔して、しみじみと酒を飲んだ店だ。入り口すぐにカウンターがありそこで一人客は飲めるのだが、中心は奥の個室と言う、宴会向けの店。今日も私がカウンターに座るや否や、どんどん奥に団体客が入っていく。それを全員女性(中年以上?)の仲居さんがさばいていく。そんな光景を目にするのも面白い。目の前の女性が注文を聞いてくれた。まずはビールをお願いすると、「お料理はコースで良いですか?」と聞いてきた。そうか、ここはコース料理がメインなのだ、と気がついたがもう後の祭り。「すみません。あまり食べられないので、単品でイカの刺身をお願いします。」と言うと、快く受けていただいた。出てきたイカの美味しいこと。さすがに青森のイカだ。と、隣に紳士のお客さんが一人で座った。当然のようにコースをオーダー。私がイカとビールでちびちびやっている間に、少なくとも4品は出てきた。それも美味しそうなものばかり。これはコースの方が絶対お得。今度はゆっくりコースをお願いしたいものだ。


 次に向かったのは、これも前回お邪魔した「ふく郎」。この店は、大変酒も肴もすばらしく、ぜひ取材をとお願いした店だが、あの当時はまだ開店して日が浅いからと断られた。しかし、あれからもう6年も経っている。もうそろそろ良いだろうと思い、暖簾をくぐった。カウンターにはまだ空きがあり、一番手前に座った。ご主人はちょっと太られた様子だが、相変わらず黙々と料理を作っていく。そして、にこやかな奥様が注文を取ってくれる。まずは生ビールだ。そして、しめ鯖をお願いした。毎度のことだが、魚は抜群に美味しい。こんなに美味しいしめ鯖は浜松の貴田乃瀬以来だ。すぐ隣に座ったお客さんに「愛娘(めご)」が美味しいよと、ここオリジナルの日本酒を勧められ飲んでみると、これがまた美味しい。やはりすばらしい店だ。取材のお願いをすると、私の顔を思い出したようだが、最後まで難色を示された。しかし、手ごたえは十分。もう一押しだ。(後日分かったのですが、六兵衛のご主人とふく郎のご主人は友達だそうで、六兵衛のご主人からもふく郎へ話していただいたようです。電話で取材のお願いを再度させていただき、やっとOKがでて、取材させていただきました。後は番組でご覧ください。)


 次はバーだ。目当てのバーへ向かう途中に小さいバー「アロー」を見つけたのでちょっと入ってみた。カウンターだけの小さな店に若い女性のバーテンダーが二人。ちょっと不安だったが、出来上がったギムレットの味はすばらしい。聞くとお二人とも札幌のNBA支部に所属していたそうだ。話すうちになんと居酒屋紀行の番組の話になり、ケーブルテレビ経由で見ているらしい。私が、その番組の担当だと白状させられ、今度の放送は必ず見ると約束してくれた。お勧めのバーと居酒屋を聞き、気分良く店を出た。


 まだ早いので、お勧めの「PIA」「ボーダー」にも寄って見た。「PIA」はカウンター部分はバーだが、広いホールはジャズライブハウス。JBLやマッキントッシュなどの名機がドーンと並んでいた。「ボーダー」も大変良いバーで、ギムレットも良い味だった。
 さてお目当ての「Ar(アール)」だ。新しくできたホテルの一階だが、ホテルのバーではなく、独立したテナントとして入っているらしい。重厚なドアを開けるとアプローチが面白い。廊下のようになっていて、ちょっとカーブしつつ、ゆるい勾配を上がると突然大空間のバーが広がる。朱色の長いカウンターに高さ4メートルはあろうかと言う、天井までとどくバックバーが壮観。奥にも、中二階にもボックス席がある。ざっと30人は入れるだろうか。誰もいないカウンターの真ん中に腰を下ろし、ジントニックをお願いした。お通しはスープだ。外は寒いのでホッとする。ジントニックを飲みながらマスターと話をすると、何と前回取材した「リッツ」のマスターだったことが判明。リッツはすでに閉店し、マスターは独立してこの店を開いたと言う。もう一杯ギムレットを頂いたが良い味だった。それにしてもすごい店を作ったものだ。マスターの造るカクテルもすばらしいが、店の作りが凄い。全国どこへ出しても恥ずかしくない店だ。ここに取材をお願いしよう。(後は番組でご覧ください。)


 最後に、アローで聞いた「樽」にも寄ってみた。飲み屋が集まる路地にある鮨居酒屋で、閉店間近なのかあまり客は多くない。カウンターにはカップルが一組、奥の座敷に何人か。カウンターは今客が帰ってようで、ちょうど片づけが終わったところだ。「田酒」の冷酒と残った刺身盛り合わせを頂いた。これが美味しい!もう最後の店だと思うと、ちょっとさびしいが、これだけ質の良いもので日本酒をグイっとやると幸せな気分だ。青森はレベルの高い店が多い。もう少し早く訪ねたらこの店に取材をお願いしていたかもしれない。
 6年ぶりの青森。実は、「みちのく ラーメン探検隊」のロケもこのすぐ前にあった。このとき食べた「くどう」のラーメンの美味しいこと!東京の昔のラーメンと言う味なのだが、しょうゆの味と魚介系のだしが素晴らしい。今回の青森の旅、大満足だった。なんといっても三方を海に囲まれた県だからこそ食べられる魚介類の美味しさには目を見張るものがある。そして、地酒。こんなところに住める人がうらやましい限りだ。



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