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漁師町ぶらり 食と笑顔を訪ねる海岸線の旅

漁師町旅日記 漁師料理指南 プレゼント
漁師町旅日記 初回放送:
#27  5/6(火) 21:30-22:00 ほか

#27 三崎漁港

三浦半島の南端に「マグロの三崎」はある。三崎は遠洋マグロの基地であり町でもあるが、沿岸の地魚を捕る漁師もいる。マグロの陰になって一般にはあまり知られていない、三崎の魚みたくなっての「三浦半島ふたたび」である。

 早朝の三崎漁港は、海鳥が乱舞していた。漁船が横付けされているところを見ると、沿岸魚の水揚げが真っ最中なのだろう。走っていけば案の定、定置網漁船がアジやイカなど雑多な魚を仕分けしながら漁港に揚げている。

 「となりの三戸浜だよぉ、ここいらは定置網が多いんだよ」

 小さな3㌢ほどのイカはケンサキイカの子供で、この辺りではメトイカと呼ぶ。透き通っていて旨そうだったので、1匹をつまんで口に入れる。生臭みなどまったくなく、甘いイカの香りがまだ残る眠気を吹き飛ばす。

 「こっちの方が旨いよ・・」

 漁師が手渡しでくれたイカはその親で、20㌢はあろうか。これを丸かじりしろってか!

一瞬ひるんだが、ここは食わねばなるまい。とつぜんやってきた漁港で、見知らぬ大男が生イカを食いちぎっているのだ。さぞ不思議な光景だろうが、ばりばりと食えば天空のカモメが羨ましそう。

 

 

 

 

 

 

 

広い漁港内は大きく2つに分かれていて、地魚は小魚のエリアである。入札風景を見ながらその奥へ行けば、すのこが敷き詰められて水が入ったバケツが遠くまで並んでいるではないか。働く人に問えば、ここがマグロのエリアで、しばらくしたらマグロが並ぶのだと言う。さすがはマグロ、小魚のエリアと大違いの広さである。

 裏手に回れば大型輸送トラックから冷凍マグロが、まるで岩でも運ぶようにフォークリフトへと積まれていく。辺りに響く、ゴロンゴロンの大音響! これで、魚かよぉ・・冷凍輸送トラックって、何度なの? マイナス60℃! ひやぁ~っ・・・!

 

マグロの入札時間までは少し間があって、ならば朝飯と漁港2階の「まぐろ屋食堂」へ。

その名の通り、三崎の市場食堂の品書きはマグロづくしだ。漁港を見ながら「マグロのカマ煮」1300円は、朝から贅沢なひとときである。骨付きのカマ部分とはいえ、1人では食べきれないほど。骨まわり特有のゼラチン質はねっとりとして、こりゃぁ旨い!

 

 

 

無心に骨から身を外しているときだった。意識のどこかで何かが鳴っていて、やがてマグロの入札時間を知らせるベルの音と確信する。急いで食堂を飛び出せば、2階から見る風景は様変わりをしていた。広い構内にずらりと並び埋め尽くされたマグロと、どこにこんなに人がいたのか、人・人・人・人の熱気。たった30分で、こんなに世界が変わってしまった。やっぱり、三崎はマグロだ!

せっかくの三崎なのだから、ここで少しマグロの勉強をしよう。実はマグロという魚はなく、私たちがマグロと言っているのはマグロ類である。そのマグロ類には高価な順にクロマグロ→インドマグロ→メバチ→キハダ→ビンナガ、がある。クロマグロは北洋近海物で非常に高価であり築地市場などに直接運ばれることが多い。そして三崎は主にメバチを扱う基地であり、静岡の焼津などはキハダやビンナガである。

 ついでにのたまえば、この日の三崎で取引されたメバチは約50トンで800匹。三崎だけで毎日、これだけのメバチが市場に流れていくのだ。偉そうに言っているが、実は市場職員の岩瀬さんが、親切にも案内を引き受けてくれたのである。マグロの入札は特に、邪魔になってはいけないので見学は2階からと定められているのだ。

 

 

 

せっかくの三崎だからと街をぶらり。お気に入りの魚屋「マルイチ」を久しぶりに訪ねてみれば、ウミタナゴ・クロシビカマス・イシナギ・ホシザメなど普通の魚屋には並ばない魚が、それもすべて捕れたてで並んでいる。ウミタナゴなどは、丁寧に開いて干されているではないか。すっかり感動して店の人に、どうして? と問えば、お父さんが捨てられるような地魚が好きなんだって。こういう魚屋、オレって大好きだ。

 店先からなかなか離れられず、まだぶらぶらと魚を見ていれば大きなメバチの頭があって、その横に得体に知れぬものが・・・何、これ? 

 「メバチの胃袋だよ、これで7匹分かな・・」

 えぇ~っ! やっぱり、マグロの三崎だなぁ。

 

#27

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1953年 新潟県に生誕。
「食と笑顔」を人生のテーマに、旅と取材と執筆活動を続けている。
現在、アウトドア誌で「食」に関するエッセーや、日刊ゲンダイ「市場食堂で食う」(写真も)などを連載中。
 
   
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