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初回放送: #21 2/2(土) 15:00~15:30 ほか |
#21 瀬戸内海は播州灘の旅瀬戸内播磨灘を巡る「ぶらり旅」は、いよいよ終盤にさしかかっていた。香川県は東端に位置する引田町に入ると、海岸線に不思議な光景を見つけた。小さな湾がせき止められて、まるで釣り堀のような池になっているのだ。聞けばそこが「安戸池(あどいけ)」で、野網和三郎翁が昭和2年、日本で初めて海水魚の養殖を成功させた、その場所だった。 主産はブリ(はまち)であり、今では「引田ブリ」としてなくてはならない産業になっている。それどころではない、見ての通りの「釣り堀」はレジャー産業としても活躍を成し、釣り客が各地からやってくる。眺めていると向こうの方で釣り竿が大きくしなり、やがて50㌢もの大物が玉網に収まっていた。 |
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翌朝は冷たい風に雨が混じるというあいにくの天候だったが、引田漁港は見てみたい。いつもならば活気ある時間のはずが、漁協職員も仲買人らしきもただ荒れる海を眺めている。鉛色の空にはトンビが舞い、眼下の人々は術もなくぼんやり突っ立っているのだ。 やがてわずかずつだが魚が水揚げされると、人々の動きも少しずつ活発になってくる。底引き漁の魚、定置網漁の魚、延縄漁の魚。他愛もない小魚が多いのだが、それでも元気よく入札が始まった。 「さぁー、いってみようかぁ。はぁーい、引田名物のブリだぁ・・さぁどうだぁ、よぉっしゃあー、わかったぁ・・・」 なんておもしろい入札風景だろう。ここでは値を競り上げる「競り」ではなく、買値を札に書く「入札」方式なのだが、このやり方が独特なのだ。小さな黒板を手に、チョークで買値を書いて「仕切人」に見せるのだ。仕切人は「よぉっしゃあー、わかったぁ・・」なのである。ほのぼのとして、おもしろ~ぃ! 船も出ていないようで一時はあきらめていたのに、素晴らしい光景に出会えた。小さな町だからこその「入札風景」は、寒い海風の中でなんて暖かい。帰るころには、みんなと友達になった気分。「また来るよ」「あぁ、気を付けて」、胸に暖房をいただいて、旅は次の出会いを探す。 |
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引田町からは程なく徳島県であり、鳴門海峡を渡れば淡路島である。ぶらり旅は幹線道路を避けて、道なき道でも海岸線を走りたい。赤い高架橋の下に迷い込むと漁師町の匂いがして、ちょっと待って。辺りには人っ子1人いなく、ただゴーゴーと水の流れる音がする。その音に向かい、堤を抜けて驚いた。漁船があるのに、そこは激流の川とも滝ともつかない光景が広がっていた。 ここもしかし誰もいなく、水の流れる轟音の足下に小魚が群れるのみ。その瞬間、向こうの漁船に人影を見るも、突然のよそ者である。テレビの視聴者は「筋書き通り」と見ているのかもしれないが、とんでもない。仕事中の地元人に突然に声をかける、それもカメラありマイクありの軍団を引き連れての私の心持ちを、どう表現したらいいだろう。無視されるか、怒鳴られるかもしれない。それでも優しい人たちにしか出会わなかったことに、いつも勇気づけられている。この時もそうだった。流れる水の轟音の中で、まさかの「不審者」であったことだろう。 「おまえら旅ぃしとんのに、地図持っとらんのかいな。ここは小鳴門やぁ、鳴門海峡の小さいんけぇ小鳴門海峡やがなぁ」 大声が水音に消されながらも、笑顔に優しさが溢れている。よかったぁ・・で一安心する、この安堵感はたまらない。ここは徳島県「北泊」であり、向かいの「島田島」を越えた向こうが「鳴門海峡」なのだった。「小鳴門海峡」は川のように幅が狭いために潮流はもっと激しく、時は折しも干潮時で、潮は激流のごとく紀伊水道へと流れていた。これが6時間もすると同じ激流で今度は右から左へ、播磨灘へと流れるのだ。すっご~ぃ! 激流の小鳴門は「鳴門ワカメ」の本場であり、訪れたときは「種付け」の真っ最中。収穫は1~2月にピークを迎え、全国に出荷される。現場を見ると一味違うのは、旅人の特権であろうなぁ。
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さぁ我々は、いよいよ鳴門大橋を渡って兵庫県の淡路島だ。実はこの地では珍しく、1つの目的があった。それは98歳の現役漁師を訪ねることで、噂を地元知人から聞いていたのだ。鳴門海峡を渡って程なく左側、つまり播磨灘側に丸山町はあって、漁協の女性職員が親切にも自宅まで案内してくれた。 菅虎吉さんは仕事部屋の玄関まで出迎えて、寒いから中へ入りなさいと手招きをする。ゆっくりとはっきりと話すのだが、方言なのか漁師言葉なのか、いきなりの訪問者にはちょっと辛い。外で日向ぼっこをしていた、この方も83歳という漁師さんに通訳をお願いすると、翁の顔にもやっと笑みが見える。戦争体験やら、エビス様に100歳まで漁をさせてくれとお願いしていることなど、じっと聞いていると虎吉翁がエビス様に見えてくる。帰ろうと握手した、その手の感触は忘れない。98年間の重さは、ごつごつとして、ざらざらとして、柔らかくて暖かい。 立ち上がると自慢の「えびす丸」を見せてやろうと、私を港まで案内する。小さな伝馬船かと思いきや、なんと立派な漁船である。時化の日は静かに仕掛けを作り、明日の大漁を夢見ているのか。 「みんなが心配するけんのぉ、あんまり沖へは行かんのや。ほっほほ・・」 静かに笑う、日焼けした98歳の横顔。ブロォン!とエンジンをかけたときの、かっこよさ! 淡路丸山の「エビス様」を私の記憶にしっかり染みいただいて、また漁師町の旅を続けるとしよう。
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