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ホーム > 番組情報 > グルメ > 漁師町ぶらり~食と笑顔を訪ねる海岸線の旅~ > バックナンバー > 漁師町ぶらり~食と笑顔を訪ねる海岸線の旅~#14
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漁師町ぶらり 食と笑顔を訪ねる海岸線の旅

漁師町旅日記 漁師料理指南 プレゼント
漁師町旅日記 初回放送: #14 10/20 (土) 15:00~15:30 ほか
#14 ぶらり鵜原漁港~洲崎
勝浦から房総半島を南下する。
一帯は南房総国定公園に指定されるほど、風光明媚な海岸線の連続だが、リゾートで形容されるようなマンションやホテルが建ち並ぶ。
観光地は足早に通り過ぎるも、食指が動く漁師町にはなかなか巡り会えない。
水平線が民家に遮られると、向こう側に懐かしさにも似た「海」の予感。
国道から狭い道に左折して、とろとろと下る。
しかし道は分岐が多く、車は潮の匂いだけを頼りに傾斜を落ちているにすぎない。
横目で見る家並みは、どれも手入れされた生け垣に囲まれて、秋の日差しが辺りの静寂を包んでいた。

何だろう、ここは!?
突然視界に入った、静かな入り江。
漁船が陸に引き上げられているのは、台風にそなえて避難をしているのが。船のない水面は微動だにせず、海鳥の鳴き声が湾を囲む森にこだましていた。
小さな鵜原漁港は自然岩に囲まれているのだが、岩には奇妙な穴がいくつも開いて不思議な景観である。
「自然に開いたんだよぉ。こっちの穴は、人が掘ったもんだぁ」
漁船のスクリューを掃除していた漁師は、突然のよそ者に戸惑いながらも親切である。
その「穴」に近づいてみれば、確かに手前の3つは人の手が入ったもの。
昔は船を格納できたようだが、今は燃え残った薪が冷たくなっている。
漁船からこぼれ落ちたのか、カンパチが1匹波打ち際で揺れていた。
高級魚だけに、腐った姿が哀れである。
漁港には漁協の建物があって、海水を引き入れた生け簀には魚が泳いでいるようだ。
だが、台風のせいで海水が汚れているのだからしようがない。
スズキの尾ビレらしきが時折水面に見えるだけで、「日が悪ぃよぉ~っ」と人なつっこい漁師に笑われる。
彼は船を港から陸に上げたばかりで、一安心なのだ。
静まり返った漁港の片隅にはトンネルがあって、のぞき込むと向こうに港らしき世界が見える。人力で掘られたであろうトンネルは暗く、歩き出すとけっこう長い。
やっと出口に近づいてホッとするのは、暗闇を恐れる人間の本能なのだろうか。
やれやれと見渡せば、ここはトンネルだけで外界と結ばれた、陸の孤島のような漁師町は長入漁港。
しばし呆然と佇んでいると、遠くに人の気配があった。
「刺し網だよ。台風なんで今日は1回だけの出漁だぁ」
漁師は夫婦で、揚げたばかりの刺し網の繕いの真っ最中。
忙しく動く手を休めずに、素人の質問に応えてくれる。
「いいところですねぇ!」
「そうかい?・・」
にこやかに世間話でもしているようだが、気づけば失礼な言葉だった。
自然と肌を合わせながら生きる人たちは、相当な不便を強いられているはずだ。
笑い飛ばしてくれた漁師の優しさに、ごめんなさい。
小さなトンネルで結ばれた小さな漁師町、ちょっと反省して振り返れば、やっぱり心に残る漁師町だ。
房総半島の最南端に洲崎灯台があって、白い灯台を見上げるように漁港が南北に分かれてある。
洲崎漁港と栄の浦漁港。
ここは太平洋と東京湾の境目であり、外国船籍の大型タンカーも忙しく行き交う。
平日の昼下がり、台風が近づく栄の浦漁港に犬を連れたお姉さんが1人。
時間つぶしのような足取りで散歩をしていて、ほかに人影はない。
やむを得ず期を見計らって、ごく自然に
「ここは何て言う漁港ですか?」
「えっ、え、ここは・・」
地元の人じゃないのかと思ったら遊漁船の女房で、船の帰りを待っているのだった。
連れている犬の名は「総子」といい、房総半島で迷い子だったから「ふさちゃん」と呼ぶ。
遊漁船は「甲子丸」で「キネマル」と読み、常連客が集うものだから無理に出船したようだ。
ねらう魚にも、帰港する時間にも「さぁ・・」。
風貌といい、とても漁師の女房とは思えない、東京湾で会ったお姉さんだ。
海を見つめ、ふさちゃんと遊んで1時間。
お父ちゃんらが乗る白い漁船が、港に弧を描きながら帰ってきた。
「ごたごた釣りだよぉ」
船が岸壁につながれると、潮焼けした顔がほころぶ。
ごたごた?
色んな魚を釣れたってことだろう。案の定マアジありオニカサゴあり、スルメイカがあってカワハギまである。
釣りをする人なら、どんな釣り方をしたのかと笑ってしまう釣果じゃないか。
釣り客は総勢5人ほどで、みな気心が知れているのだろう、きつい冗談が楽しそうに飛び交っている。
聞けば今日の最高齢者は79歳、船のミヨシ(先端)に座り込んで1日中釣っていたという。
台風が近づいているミヨシは、上下に大きく揺れっぱなしだったに違いない。真っ赤なオニカサゴを、嬉しそうに見せてくれた。
沿岸の漁師はエビ網を揚げるだけなのに、遊漁船は台風の位置を正確に読みながら、つかの間の沖合漁をやってのける。
「もっと釣れたときに、来てくれよぉ」
釣れなくてもたぶん、彼らは満足なのである。
海原に出た、それだけで今日1日が満たされる。
いろんな人たちがいて、海がある。
東京湾の玄関口は、まだ大海原と呼ぶにふさわしい。
やがて湾奥に進むにつれ、対岸との距離は縮まり、工業地帯へと突入していく。
それでも海とともに生きる漁師町が、この奥深くまで点在する。東京湾に内房から長く突き出た「富津岬」が、右手に「館山湾」を形成しているその辺り。アナゴを名物とする富津市や、アサリやバカガイ漁を専門とする木更津市も遠景に霞んで見える。
内房で明日は、どんな漁師町に出会うのだろう。
「漁師町ぶらり・#4」でお邪魔した潜水漁でミルクイを捕る、横須賀の安浦漁港は対岸である。同じ海で、みんなはどんな住み分けをしているのだろうか。とりわけ、横浜小柴のアナゴ漁は不漁続き。千葉の富津辺りが楽しみになってきた。
洲崎のみなさんに別れを告げて、「ぶらり旅」はもう少し、東京湾奥へと入ってみるとする。
 

 釣り曜日 西潟市場

「釣り曜日」
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1953年 新潟県に生誕。
「食と笑顔」を人生のテーマに、旅と取材と執筆活動を続けている。
現在、アウトドア誌で「食」に関するエッセーや、日刊ゲンダイ「市場食堂で食う」(写真も)などを連載中。
 
   
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