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ホーム > 番組情報 > グルメ > 漁師町ぶらり~食と笑顔を訪ねる海岸線の旅~ > バックナンバー > 漁師町ぶらり~食と笑顔を訪ねる海岸線の旅~#13
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漁師町ぶらり 食と笑顔を訪ねる海岸線の旅

漁師町旅日記 漁師料理指南 プレゼント
漁師町旅日記 初回放送: #13 10/ 6 (土) 15:00~15:30 ほか
#13 勝浦ぶらり
千葉県は房総半島の東側は、内房の東京湾に対して外房と呼ぶ。東に広がる太平洋の先はアメリカであり、打ち寄せる波が高い岸壁を浸食していた。
南端にほど近い「勝浦市」に宿をとり、夜明け前に「勝浦灯台」へと向かう。
標高約70?とある断崖絶壁は「ひらめきヶ丘」とあり、おそらく最近になって名付けられたものなのだろう。夜の広い太平洋を高台から望むと、海は屏風のように直立して見える。その屏風にイカ釣り漁船と思われる明かりが点々とくっついて、灯台の青白い光りが命綱のように伸びていくのだった。
空と海は、溶け合うように白んでいく。断崖の道路は金網フェンスが張られて、手書きの看板がいくつも見えてきた。
「ゴミを捨てるな!」。
崖下はまだ藪に覆われているが、やがて冬になって崖肌があらわになると、ここはゴミ捨て場と化しているのだ。冷蔵庫や洗濯機、自転車や自動車までが崖の途中に引っかかって、夜が明けるとがっかりしてしまう。
思えば日本の海岸線は、見晴らしがいいところほど粗大ゴミ捨て場になっている。無知・バカ・エゴ野郎・吐き捨てたくなるような人間たち。悲しい。
勝浦の宿は「民宿・宮川丸」で、父ちゃんはキンメ漁師で母ちゃんは海女だという。
あいにく台風の接近中で沿岸漁はできないが、大型のカツオ船が帰ったようだと、一緒に地元の魚屋へ急ぐ。
聞いてもよくわからない名前の、地元の魚料理をお願いしたのだ。
母ちゃんのご推薦は「今井鮮魚店」。
カツオは大きな樽に頭から突っ込まれて、水氷から尻尾だけが見えた。
魚屋のご主人が「これがいいよ」と引き抜いた1本は、丸まると太った4?もの。
カツオをゲットしたら、他の魚も見てみたい。
おっとぉ~、タカノハダイが切り身になって390円!
こう言っちゃあ魚に悪いが、タカノハダイとはバカにされて捨てられることがほとんど。そんな魚もウロコを取って売っている、エライ!
で、このタカノハダイもついでにもらう。
「民宿・宮川丸」の厨房は、田舎に帰って母と一緒に料理しているみたい。
「アンタ、そうじゃないわよ、骨もたたきなさい。どう? 美味しいでしょ!」
台所こそ、最高の食卓である。
料理をしながら、味見をしながら、美味しいね!
と目を輝かせる。
カツオの血合い部分を骨と一緒にたたき、醤油と生姜を少々。
熱湯を注いで味見をすれば、なんと濃厚なカツオ風味。
さっぱりとしていて、魚臭いなどと言うヤツがいたら背中を向けて食うだろう。
これを飯にかけると、ユムグリ・・ではない「湯もぐり茶漬け」である。
捕れたばかりのカツオだからこそできる技、血合い部分とはほとんど捨てる箇所なのだ。
びっくり仰天、こんな料理は知らなかった。

驚きの第2弾料理は、カツオの腹身(ハラス)を使った、無理に名付ければ「ハラスの酢漬け」。
マグロでいうなら「大トロ」の部分をざっくりと切り取り、雪が積もるほど塩にして30分、生酢に漬けて30分。
適宜に刻んだ切り口は、うっすらと白く酢に締まり、脂身の層がくっきりと見える。
ひと切れを口に入れる、噛みしめる・・
カツオの脂が塩と酢に同化して甘ったるく溶けていく。
皮を奥歯ですりつぶす食感もいい。
このハラスも鰹節工場などでは大量に出る副産物だが、醤油漬けや干物になって商品化されるようになったのは最近で、多くは今でも捨てられる箇所なのだ。

もう1つ、近所のオバチャンが、カツオの血合いと半端な身肉をフライパンで炒る「イリズ」という料理を作ってくれた。
勝浦の女性たちは、父ちゃんが捕った魚だけに骨のズイまで無駄にしない。
甘辛に煮てくれたカツオの頭やタカノハダイにも、そんな心意気が満ちていた。
母ちゃん、ありがとう!
勝浦で観光客に人気の「朝市」を尻目に、漁港へと向かう。
海は台風の接近を予感させるが、濡れた漁網を囲んで作業している人たちがいる。
「はい、こんにちは・・」
近づいて声をかけると、後ろ向きながら挨拶を返してくれる。
漁網は「エビ網」とよぶ刺し網で、父ちゃんが揚げてくる網を女衆が、陸で獲物やゴミを外すのだ。
台風前はゴミも多いがイセエビもよく掛かったと、少し笑顔がもれる。
イセエビは、足や触覚を折ると商品にならない。
漁網にがっちりと絡まった棘だらけのイセエビを、小さな手カギ1本で器用に外していく。
「なぁに、何十年もやっているものぉ」と、笑顔のかわいいお婆ちゃんは87歳だった。
気づくと、さっきから「ギィギィ」とうるさいほど音がしている。
なんと、イセエビが鳴いているのだった。
おそらく足下の漁網には100匹ほどが絡まっているに違いない。
なぜなら千葉は、イセエビの漁獲量日本一。
そのほとんどは外房と聞く。
ギィギィギィ・・・歩き出すと鳴き声も遠ざかる。
漁港の角を曲がると、また「エビ網」の掃除中である。
ここは3組ほどの漁師の共同作業所のようで、家族総出で忙しそう。やはりゴミ取りが大変なようで、みんなしかめっ面だ。
男衆がいるのは、沖での網揚げが終えたからだ。
今日はイセエビの大漁で、家に帰ったら一杯やって寝るのかと思ったら大間違い。網の掃除の次は修理をやり、今晩にはまた網を仕掛けに海に出ると言う。
「寝る暇ねぇよぉ」笑みが出るのは捕れたからで、ゴミばかりなんて日もあるのだから、漁師の仕事は絶対に楽ではない。
海から揚げたばかりの漁網のカーテンに囲まれると、気の遠くなるような磯の香りに包まれる。これを「磯臭い」などと言ってはいけない。
「長生きする秘訣よぉ」オバチャンが高笑いしながら、私にサザエの外し方を指南する。漁網に絡まったサザエは「知恵の輪」以上にイライラとさせ、入り口も出口もわからぬまま、なおもぐるぐる巻きとなって降参。みんなに笑われながら、漁網の外へ逃げ帰る。

勝浦の漁師町で、地元に秘められたような「カツオ料理」に出会った。
お客様用ではなく、母ちゃんと一緒に台所で食べた。イセエビが、記憶の中で鳴いている。
 

 釣り曜日 西潟市場

「釣り曜日」
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1953年 新潟県に生誕。
「食と笑顔」を人生のテーマに、旅と取材と執筆活動を続けている。
現在、アウトドア誌で「食」に関するエッセーや、日刊ゲンダイ「市場食堂で食う」(写真も)などを連載中。
 
   
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