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ホーム > 番組情報 > グルメ > 漁師町ぶらり~食と笑顔を訪ねる海岸線の旅~ > バックナンバー > 漁師町ぶらり~食と笑顔を訪ねる海岸線の旅~#7
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漁師町ぶらり 食と笑顔を訪ねる海岸線の旅

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漁師町旅日記
#7 シロエビを求めて新湊へ
「今日は、船が出ておらんで。漁港は休みだぁ」
新湊漁港は、冷たい風が吹き抜けている。床を水で流している漁師風が、不思議そうに旅人を見つめた。
能生漁港を後にして北陸自動車道を南下すれば、やがて左手に立山連邦を見る。富山湾はホタルイカの新湊へ向かうべく、小杉ICで降りると所要時間は約2時間。国道472号線をまっすぐ富山湾まで約40分、突き当たると新湊漁港だった。
またしてもシケの漁港で、行き場を失う。がっくりと疲れが出るも、漁港の2階に"JF新湊漁業協同組合女性部"とある市場食堂を発見。藁にもすがる思いで階段を登れば「やってますよぉ、どうぞ!」の声が響く。
写真写真
写真写真 「残念だったわねぇ、シロエビの刺し身でご飯でも食べていきなさい」
漁港が休みでも、漁協の女性部は頑張っていた。
名物のシロエビは漁港内の加工場で剥き身にされた冷凍で、プラケースに入った塊ではエビよりもイカ刺しに見える。
そのシロエビに、イカ刺しがやっぱり添えられての白い皿。2cmほどの剥き身を、数本まとめて口に入れる。とろりとした甘味は繊細で、しょう油にもご飯にも負けてしまいそう。
シロエビを頭ごと、殻ごと食べたことがあった。生ではガサガサとした食感だけだが、かき揚げでは殻の香ばしさが記憶に残る。
お茶よりもビールをもらい、再度お刺し身に挑戦。探し出すような儚い甘味に言葉を失い、ご飯でもと言われても箸がのびない。
シロエビは冷凍にしないと殻から剥けず、全体で7cmほどあっても剥き身にするとわずか2cmほど。加工場のオバチャンたちが一心に手で剥いて、100g(約100匹分)が1000円となる。
写真写真
写真写真 新湊の漁港は加工場が多く、白衣姿の人たちがけっこう多くて気にかかる。孫七という漁船が居並ぶ岸壁には川田水産なる加工場があり、中から笑い声が漏れては、入ってみたい。
親切な女性職員がいて、思いがけずにホタルイカの出荷作業を見学。
「ホタルイカ漁は、新湊より滑川が本場ですよ。向こうから運んで、ここが加工場なんです。生のホタルイカは、ここでパック詰めにされて全国に出荷されます」
白衣にマスク姿のオバチャンたちは皆親切で、休憩時間にインスタントコーヒーまでご馳走になって気が付けば、若いオネエサンも混じっている。北陸の女性は背格好まで一緒なら、遠慮を忘れて一緒に笑うしかないだろう。
出荷される生のホタルイカを1匹もらって口に入れれば
「食っちゃったよ~」
と、工場内が大笑い。なぜ笑われたのかわからぬまま、オレも笑うしかすべはなし。
写真写真
写真写真 すこし離れたところには、ホタルイカのボイル工場。イカを茹でた独特の、いい匂いが辺りに漂っている。
外部に大きなタンクがあって、カメラマンの紀野さんが蓋を開けてのぞき込む。無言のままの妙な顔つきが気になって、オレも蓋を開ける。たぶん、同じ顔つきをして
「村っちぃ、中を見てごらん」
そして、ADの村っちぃ
「う、ぎゃ~っ!」
恐らく数トンのホタルイカが、その中に詰まっていた。それらは太いパイプで場内へ押し出されると、流れ作業が待っている。
一定量が次々に茹でられると、コンベアーに運ばれながら扇風機で冷やされる。待ちかまえる白衣姿の女性たちは、計量しながら素早く箱詰め。完璧な流れ作業は、見ていて感動的でもある。
モーター音の響く中、目と手の仕草で許しを得て、湯気だった1匹を口に放り込む。
熱々はプチンとつぶれて、脂っこい甘味が口いっぱいに広がった。目を丸くして、言葉が出ない。
写真写真
写真写真 食べ慣れたホタルイカは、都会の居酒屋のお通し。同じ姿にして、なぜこうも味が違うのか。床に落とした一匹も、もったいなくて口に入れる。扇風機を通り抜ける前の、熱々が特に美味!
ホタルイカの旨味が、熱で封印された瞬間だ。肝が膨張してもう耐えきれない状態を、歯に僅かな力を与えて弾けさせる。
「ボイルした瞬間だろう? まいったかい!」
茹で方を担う職員の笑顔が得意気で、そう言っているようだった。オレは年甲斐もなく親指を立てて、新湊の釜揚げホタルイカに脱帽する。
 

 釣り曜日 西潟市場

「釣り曜日」
(株式会社エンターブレイン運営サイト内)
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1953年 新潟県に生誕。
「食と笑顔」を人生のテーマに、旅と取材と執筆活動を続けている。
現在、アウトドア誌で「食」に関するエッセーや、日刊ゲンダイ「市場食堂で食う」(写真も)などを連載中。
 
   
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